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CTOのブログ(8) 湿原と文化のいろどり

こんにちは、ラテラCTOの荒磯恒久です。今回も湿原賛歌です。

湿原は人間の文化に大きな彩(いろどり)を与えてきた貴重な地帯である。美唄湿原に自生する草木は世界の湿原に共通するものが多く、イメージは世界につながる。

クラウドベリーはラズベリーと同じくらいの大きさと形だ。美唄湿原にも自生する。このベリーの和名は「ホロムイイチゴ」。最初に発見された場所、幌向(ほろむい)の地名が名前に入った。美唄市から遠くない。

写真は実を付けるクラウドベリー。北海道、利尻島の湿原で撮影されたものだが、美唄湿原のものと同種である。

利尻島の湿原に自生するクラウドベリー(錦織正智氏撮影)

クラウドベリーをこよなく愛する国はフィンランドである。フィンランド語では「ラッカ」をはじめいくつかの名前で呼ばれている。2ユーロ硬貨のデザインに取り入れているほどの「国民的ベリー」であり「生」でもケーキの材料や添えるソースとしても愛用される。フィンランドは湖沼の国で、大小合わせたその数は人口を超えると言われている。湿原も多く。そこに自生する「ラッカ」は遥か昔から人々に癒しを与えていたことは想像に難くない。湿原とのつながりで、遠くフィンランド人と心が通いそうだ。

英語名 「クラウドベリー cloudberry」 は直訳すると「雲いちご」。この名前の由来は、「泥炭湿地がふわふわしていて、雲の上のようなところに自生しているから」であると、道総研・林業研究所の錦織正智研究主幹が話してくれた。人の感覚は洋の東西を問わない。

ちなみに「ほろむい 」はアイヌ語 ”poro_moy”、「大きな川が曲がって水がゆったり流れるところ」の意味を持つ(*)。”moy”を一語で表す日本語が無いので長い訳になっているが、石狩川が滔々と流れる原野(湿原)がイメージできる。

(左)湿原に立って説明する錦織主任研究員 (右)ヤチヤナギ

湿原にはヤチヤナギという低灌木が多くある。ヤチは「谷地」で湿原のこと。ヤナギというが、葉の形が似ていることから付けられた名前で普通に見かける柳とは別物。葉をもむと爽やかな香りがする。この葉、なんとホップが主流になるまでビールの香り付けに使われていたのだ。中世 (1000~1400年ころ)のヨーロッパでのことだ。泥炭湿地はドイツ、オランダ、ベルギー、デンマーク等の低地帯にも多い。なぜか旨いビールを作る国と重なる。これらの湿原にはもちろんヤチヤナギがあり、ハーブとして使われた。ビールの香り付けはヤチヤナギを主とし、他の数種のハーブとミックスして利用された。ハーブの種類と配合は地域によって独自(秘密)であり、味と香りの良さを競ったことだろう。このような中世のハーブを使ったビールはグルートビールと言われる。現代でも(日本を含めて)愛好家のために生産され、ヤチヤナギが使われている。

ホロムイイチゴもヤチヤナギも、林業試験場の錦織さんの研究室で培養されていることは言うまでもない。

湿原という言葉からはシャーロックホームズが活躍する「バスカヴィル家の犬」に出てくる底なし沼を連想する向きもあるかも知れない。このイメージは大きな間違いだ。湿原は世界中の多少高緯度の地帯に広く存在し、そこでは雲の上のイチゴを生み出し、薫り高いビールの味付けを生み出す。湿原の恵みは食文化に限らずまだまだ多くある。湿原は人間の文化に彩を与え続け、生活の質の向上の一角を支えてきたのだ。

(*):出典:「アイヌ語地名リスト」、北海道、アイヌ政策推進局アイヌ政策課 (2019) http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/ass/new_timeilist.htm

 

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