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CTOのブログ (16) 「虫が湧く」とは何か ~生物自然発生説と白鳥の首フラスコ~

こんにちは、ラテラCTOの荒磯恒久です。ラテラの無菌人工土壌は「菌や虫の心配がない土です」と説明しています。同じ意味で「虫が湧かない土」という言い方の方がわかりやすいかも知れませんが、ラテラではほぼ、この言い方は使いません。何にこだわっているか? 今日はそれを激白したいと思います。

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古代エジプトでスカラベ(フンコロガシとうコガネムシのような昆虫)が神に列せられた話は以前のブログ「なぜファラオは虫を神にしたか」で触れた。丸く成型された牛糞から湧くように生まれてくることに、丸い太陽から生命が湧き出る神秘性のアナロジーを感じたからである。ギリシャの自然哲学者、アリストテレスが生物の中には物質から生まれるものもある(例えばホタルは草の露から生まれ、タコやイカは海底の泥から生まれる)とする「自然発生説」を提唱した。今では否定される現象だが、古代ギリシャ時代で「一部の生物では」という限定まで付いているこの説には、アリストテレスの観察の鋭さに凄みを感じる。この考えはルネサンス期まで疑いもなく受け入れられた。

日本語の「虫が湧く」という表現の根底にも「自然発生」の概念がある。

自然発生説を完全に否定したのは、つい150年ほど前にフランスのルイ・パスツールが「白鳥の首フラスコ」(下図)を使って、煮沸した肉汁から自然に菌が発生することはないと証明したことからである。

17世紀から自然発生説に反する実例は徐々に見出されていた。しかし、微生物に関する実験は難しかった。フラスコに肉汁を入れ、煮沸して密閉しておくと菌の発生はないが、「空気が入れ替わらないので、発生した菌が死に絶える」という反論を打ち破ることができなかったのだ。

パスツールはフラスコに肉汁を入れ煮沸し、そのフラスコの首を細長く引き延ばし、埃が入らないように曲げた。この状態で空気は通る。しかし、肉汁からの菌の発生はなかった。空中浮遊菌はおおむね埃に付いていたから「白鳥の首」に引っかかって肉汁までたどり着けないのである。。

近代生物学を確立する画期的実験である。これを受けて、我が国の理科教育では「菌が湧く、虫が湧く」という表現を、自然発生を認める前近代的な間違った表現であるとして排除した。

代わりに「発生する」という表現を使う。

現代人は、フンコロガシは牛糞の中に産み付けられた卵が孵化して、餌になる有機物を摂取して成虫になることを知っている。無菌人工土壌は動物や微生物の餌になる有機物を含まないので、殺虫剤が無くても菌や虫の発生を阻止できるのだ。

無菌人工土壌では「菌や虫が湧かない」と表現するのが分かりやすいけれど、科学の厳密性を尊重する上ではこの表現は使いづらい。私は昔、「虫が湧かない」と言った瞬間に友人の生物学者から厳重注意を受けたことがあった。「お前はパスツールの偉業を理解していない!」と。

 

「湧かない」に代わる表現をあれやこれやと考えた。やっとたどり着いた表現が「菌や虫の心配がない」だったのだ。「発生しない」という言い方は、日本語としての「こなれ」が悪い。

 

言葉には情緒や感情を表現する力と事実を厳密に論理的に記述する力の二つ機能がある。

前者の機能によって詩や小説が書かれ、映画やドラマ、歌劇や演劇、さらにはお笑いが生まれ、恋人、友人や親子の会話が生まれ人間の生活を豊かにする。後者はいわゆる理系の学問の根底を作り、やはり人間の生活を豊かにしている。

極めて論理的なソフトやハードから成るスマホを使って、感情や情緒を交換し合っているように、我々はもっと言葉の二つの機能を上手に組み合わせて豊かな表現を作りたいものである。

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