2023-02-22 CTOのつれづれブログ ~春の風 漢詩の世界では~ 我が国では1000年以上前から春風は東から吹いてくるそよ風でした。お隣の中国はどうでしょう? 春を告げる風は、気象学のデータよりは感情が作るものですね。感情を知るには漢詩を見るのが近道でしょう。 南宋に真山民という詩人がおりました。この人に「新春」と言う詩があります。五言律詩で最後から二番目の句に東風が出てきます。 東風無厚薄、「とうふうこうはくなく」と読み、髄例到衡門「れいにしたがいてこうもんにいたる」と続きます。意味は「東風は、分け隔てなく例年のように粗末な我が家の門にも吹いてくる」といったところ。 詩の題は「新春」ですから、東風は春の風を意味することになりますね。 下の写真は明代の画家、辺文進作の雪梅双鶴画からその一部を抜き出したものです。鶴の頭の上に梅の花が咲いています。東風が咲かせたのでしょうか。 しかし、どうもこの東風は東から吹いてくる風そのものではでなく、中国古代の自然哲学「五行説」によって導き出されたもののようです。五行説ではこの世にある物質の根源は「木火土金水」の5要素にあると考えられました。理科の教師の私が見ても、なかなか味のある考えです。これを根本原理として、四季「春夏秋冬」は、それぞれ「木」「火」「金」「水」に割り当てられました。また方角「東西南北」もそれぞれ「木」「火」「金」「水」に割り当てられました。この理論から春は東に結び付けられます。ここから春風は東の風であると導かれます。そして東の風は暖かいそよ風であるとされます。こう見ていくと李白が言った「馬耳東風」という言葉の意味も分かってきますね。私は、冬が北風なのはわかりますが、その他は象徴的なもののように感じています。 我が国の大友家持や菅原道真のような、第一級の学者が春の風を「東の風」としたのもこの漢詩の常識からだったのかもしれません。家持や道真にとって漢詩や中国文化は、まるで呼吸のように生命の一部として同化していたのでしょう。実際の風の方向とは別の、象徴としての春風だったと想像できます。 興味深いことに、菅原道真の孫の菅原文時は「和漢朗詠集」92「春」にこんな句を残しています。 誰言春色従東到 : 誰か言ふ 春の色 東(ひんがし)より到ると 露暖南枝花始開 : 露暖かにして 南枝(なんし)に花初めて開く 誰が言ったのか、春は東から来るという決まりです(が)、(陽に)露も暖められて、南の枝から(梅の)花が咲き始めたよ。この写実的な春の喜びの表現を、「東風(こち)吹かば 匂いおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」を残した菅原道真の孫が書いたことに、私は「名家」のみが表せる高尚なユーモアを感じます。 春は暖かい東からのそよ風が連れてくる。そう信じて楽しい春を待つのが我々の持つ素晴らしい文化なのですね。 一覧 CONTACTお問い合わせ 一般のお客様(商品について・発送など) 商品に関するご質問、ストアに関するご意見・ご質問などは、こちらからお問合せください。 CONTACT FORM一般のお客様向け 大量注文を検討される事業所様 開発や、大量の注文のご相談などは、こちらからお問合せください。 CONTACT FORM事業所様向け INSTAGRAM YOUTUBE 特定商取引法に基づく表記 配送・送料について プライバシーポリシー トップ こんな方へおすすめです 土壌ってなに? わたしたちについて オンラインストア 開発ストーリー スタートガイド アクセス マイカート 当サイトについて お問い合わせ Company Profile