CTOのつれづれブログ ~Q&A どうして植物は育つのに菌や虫は育たないの~
こんにちは、ラテラCTOの荒磯恒久です。無菌人工土壌につてのQ&A、4回目です。
Q4. 無菌土壌で植物は育つのに、なぜ菌や虫は育たないの?
その答えの中心は、「植物は光エネルギーを利用することができるのに、動物やほとんどのバクテリアやカビは光エネルギーを利用できないことから来る」と言えます。写真はいろいろな波長のレーザー光です。レーザー光はエネルギーが大きいですね。太陽光はレーザー光ではなく自然光ですが大きなエネルギーを持っています。波長が混ざり合っているので白色になります。プリズムなどで波長を分解すれば、虹の7色になりますね。
話は突然地球の歴史になりますが、我々の住む地球は46億年前に誕生しました。そして生命の起源は38億年前にさかのぼります。「最初の生命はどんな形?」という根本的な質問への答えは難しいのですが、ここでは「小さな分子膜の袋の中に入っていて、膜の外から栄養を取り入れて自分の形を維持し、自分の複製を作ることができるもの」としましょう。アメーバのような単細胞生物のイメージです。(アメーバは原始生命体に較べるとものすごく進化しています。)
原始の海は有機物に満ちていました。その中から生命は誕生したのです。生命体を構成する要素=核酸、たんぱく質、脂質=はいずれも炭素化合物、つまり有機物です。初期の生命体は外部の有機物を取り入れて増殖したに違いありません。生命体は原始の海で増え続けました。増殖を安定的に繰り返すことから、そろそろ「生命体」という物質みたいな呼び名をやめて、ダイナミックな感じの「生物」と呼びましょう。しかし原始の海の有機物には限りがあります。数億年にわたって生物が有機物を取り続ければ、海から有機物がなくなってくることでしょう。このままではせっかく生まれた生物は絶滅します。
しかし、ちょっと変わった生物が生まれていました。太陽の光エネルギーを使って、水と二酸化炭素(たまにはそれ以外の無機物質)から有機物を自分で作る生物です。
地球の生物は救われた!
これこそが光合成を行う緑の植物の祖先なのです。32億年前のことでした。この植物の祖先に近い生物は現在も生き続けています。写真にあるシアノバクテリアです。光合成の作用で地球には再び有機物ができてきたのです。地球の生物は救われたのです。
この出来事で生物界は大騒ぎして、といっても何億年もかけてですが、無機分子のみを栄養として光合成によって有機物を作り、生命を維持する独立栄養派と、有機物作りは植物に任せて自分はそれを栄養として取り込んで生命を維持する従属栄養派が生まれ、その後生物はこの二派に分かれて進化してきました。この区別は現在に続きます。植物はもちろん独立栄養派です。無機物と太陽エネルギーだけで生長できるのです。従属栄養派では動物(昆虫や虫も動物)が代表的ですが、菌やカビも含まれます。従属栄養生物は必ず植物が作った有機物を餌にします。肉食動物もその餌になる草食動物は植物を食べて生きています。菌やカビは動物や植物を分解して有機物として取り込み生命を維持しているのです。一部の菌には無機物の「化学エネルギー」を使って生きるものもありますが、ほぼ空中に浮遊していませんでの室内栽培では無視できます。
無菌土壌の謎は解けてきました。土に含まれる成分を38億年前の地球に近づけると、植物は成長できますが菌や動物(虫)は成長できないはずです。でも、そんな昔の地球にどうやって近づけるのか?
その答えも簡単でした。生物の栄養の視点からは、有機物があるか無いかだけの問題になるのです。無菌人工土壌には有機物を入れなければよいのです。これで菌と虫は育ちません。殺菌剤や殺虫剤はいりません。
植物の輝かしい履歴~有機物に頼らず独立して生命を維持してきたこと~を思う存分発揮して、野菜も花もこの無菌人工土壌で生長してもらいましょう。