CTOのつれづれブログ ~観葉植物の虫除け:コバエ~
こんにちは、ラテラCTOの荒磯恒久です。
観葉植物と虫のお話で、アブラムシ、ハダニ、カイガラムシのお話をしてきました。これらは植物の茎や葉に付く虫でしたね。
室内で観葉植物を楽しんでいると、植物に付く虫のほかに土から湧いてくる虫にも悩まされることがあります。ここで気軽に「土から湧く」と書きましたが、これは生物学の先生からお𠮟りを受ける言い方です。お叱りは「虫は湧くものではない。必ず親がいて自然にではなく親から生まれるものだ。発生すると言いなさい。」というものです。ごもっともです。私も以前のブログでパスツールによる、自然発生は無いことを証明する実験を取り上げたことがあります。でも、私は「湧く」と言う日本語には「発生する」という意味も十分備えていて、この言葉は100%自然発生を意味するのではないように思っています。自然発生がまだ多くの人に信じられていた時には、正しい事実を知ってもらうために厳しい言葉遣いも必要だったと思いますが、湧くという日本語には親しみがあって、私は「また叱られるかなぁ」と思いつつ、しかし、しばしば使っています。
さて、今日のテーマはコバエ。自然にある土の中にコバエの卵があると、温度や湿り気などの条件が整えば孵化して幼虫になります。幼虫が育つにはその幼虫の餌が必要です。餌は、実は土に含まれる有機物(腐葉土など)なのです。幼虫は植物栄養の硝酸イオンやリン酸イオンなどを餌とすることはできません。有機物だけ食べて大きくなり、やがて蛹(さなぎ)になります。さなぎの殻の中で幼虫は大変身してイモムシスタイルから6本の脚、大きな複眼、空中を飛ぶハネを作ります(注1)。変身が終わったら蛹を破って飛び出すのです。これを「羽化(うか)」と言いますが、コバエであってもこれは神秘的な瞬間です。
コバエはとても種類が多く、家庭の台所で見られるものはショウジョウバエやノミバエで、上のイラストはショウジョウバエです(目が赤い)。これらは食品や生ごみを好みます。観葉植物から出てくるものはキノコバエ、チョウバエです。キノコバエは、見た目はむしろ蚊のようです。一方チョウバエは羽が大きくハエのイメージです。
下の写真は、キノコバエの一種でネギネクロバネキノコバエです。ネギやニンジンの地下部をかじり、農作物へ被害を与えます。(出典:「ネギネクロキノコバエの特徴とその対策について」、太田泉、植物防疫所病害虫情報、No.113, pp.1-2, 2017)
「根をかじる」のですから、幼虫は地下にいるのですね。
この仲間は土に産卵し、クロバネキノコバエでは4~7日で孵化し、幼虫は土の有機物、特に腐葉土を餌にして育ちます。幼虫は8~20日で蛹になりその後3~5日で羽化します。産卵は1度に60~80個の卵を産むとされ、爆発的に増殖します。日本各地で大発生が見られ、多くの自治体が広報に載せて注意を呼び掛けていますね。
チョウバエは少しキノコバエと違います。水のある所に産卵するのです。観葉植物で狙われるのは鉢の受け皿。ここがジメジメしていたㇼ、土から流れ出した有機物が溶けていたりするとチョウバエの大好きな繁殖場所になります。
観葉植物のコバエ対策の「鍵」は土が有機物を含まないことと、ジメジメ対策にあるようです。ラテラの無菌土壌「クリスタルグレイン」は、コバエの卵や蛹を絶対に含みません。腐葉土など有機物も入っていません。飛んできたキノコバエが産卵しても幼虫が育たないのです。ジメジメ対策として、クリスタルグレインは湿っているとグレー、乾くと白になりますので、水のやり過ぎは一目瞭然です。水やりの時、土の上の方が一部グレーになってきたらそれ以上水をやらなければ良いのです。表面は乾いていても、その下は植物のために保水されていて、さらに鉱物結晶から徐々に肥料成分が溶けだしているので、セラミックなどを使っているときのように液肥を定期的につぎ足す必要もありません。下の写真からクリスタルグレインの乾いているときと湿っているときの色の違いを見てください。左が乾いているとき(白)、右が湿っているとき(グレー)です。
さらに、クリスタルグレインでは水が腐らないので底穴無しの鉢が使えます。そう、受け皿がいらないのです。受け皿無しではチョウバエの産卵する場所がありません。クリスタルグレインは観葉植物にピッタリの人工土壌なのです。
注1:完全変態といいます。